PAGE_01

なくしもの

土曜日の朝。
家の外を見るとどんよりとした曇り空を背景に、
桜の花が少しずつ開花してきていた。
季節はもうすぐ春。

ノロウィルスに感染してしまった息子の 汚れた服やシーツを買うため、 看病を妻に任せ、 私は大急ぎで買い出しに出かける。

ホームセンターに車を停め、シーツや子供用の ドリンクなどを買って 道路の反対側にある子供服屋で服を探す。

あれにしようか、これにしようか…
買い物かごにiphoneを入れて 妻とLINEでやりとりをする。

あまり悩んでいる時間もないぞ。



買い物を終え、駐車場に戻ろうとすると…
外は大雨。

傘はない。
パーカーのフードをサッとかぶって 駆け足で車へ向かう。


さあ、帰ろう。息子が待ってる。
車に乗り込み、
妻に連絡しようとしたその時・・・



ない。iphoneがない。

たしかポケットに入れて・・・
・・・ない、ない、、ない！



頭は真っ白。
「そうか、子供服屋の買い物かごの中！」
思い出した。一安心。



再び子供服屋に向かい、店員さんに 聞いてみると・・・
「ございません。」
いや・・そんなはずは・・。

再び頭が真っ白に。

他になくすような場所もない。
ここになかったらどこに・・。
もしかして、
買い物かごに入れたまま盗難された・・？



さぁ、どうしたものか。
大雨に打たれる中、
私は交差点で肩を落とした。


ふと地面を見つめたその時・・・

雨に打たれている 見覚えのあるiphoneが目に入った。

あ・・・あった！

しかし喜んだのは一瞬。
この雨の中、 しかもこんな歩道の真ん中に・・・。

絶対に踏まれてる。

過去のiphoneで二度にわたって 画面を割ってしまった記憶が頭を駆け巡り、 割れた画面を想像しながら 恐る恐る拾い上げた。

よかった。割れてない・・・！
顔認証もしてくれる。

過去の反省から購入した、 耐衝撃ケースに救われた。

「ただいま～。」

一安心して帰宅。
ほっとした気持ちで
息子の看病ができたのも束の間、


連休を終えたころには私もノロウィルスに感染。
災難に災難が重なった出来事だった。